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●管理会社設立のすすめ

1.管理会社を作る3つの目的

管理会社を設立することで所得税・相続税を節税することが可能です。
では、管理会社を作ることで具体的にどのような効果を得ることができるのでしょうか。見てみましょう

①所得の分散
例えば、概算にて説明すると
(1)2000万の所得を分散しない場合
分散しないと2000万×50%=1000万円の税金(所得税・住民税・事業税の合計)がかかります。
(2)2000万の所得を4人で均等に分散する場合
2000万÷4=500万
500万×20%=100万(一人分)(所得税・住民税)
100万×5人分=500万円に減少。
上記を比較すると分散することにより500万(1000万△500万)もの税額を節税することにつながります。したがって節税はまず、所得の分散が最も合理的な方法といえます
これは所得税の税率が所得金額に応じて5%から45%となっていることと、不動産賃貸業には事業税の5%を負担する必要があるからです。

②財産の移転
(1)管理会社が無いケース…推定相続人(通常、子供)に現金を移転する方法
所得税を支払ったあとの金額(可処分所得)から贈与という形をとります。従いまして、現金をもらった推定相続人にさらに贈与税がかかります。
例えば、3000万の所得に対しておおよそ1200万の税金(所得税・住民税・事業税)がかかります。
ここから仮に500万円を資金移動しようとすると相続人に53万円の贈与税がかかります。
(2)管理会社を設立して現金を移転する方法
管理会社を設立し、給与という形で相続人に500万を渡せます。
この形態ですと所得は3000万円から500万円ほど減ります。
この効果は税率を仮に50%と想定すると、約250万の節税となります。
一方、500万を給与でもらった相続人については、55万程度の税額(所得税・住民税)ですみます。
上記と比較すると管理会社を設立して給与という形をとると250万円もの節税効果があることがわかります。このように管理会社を設立することにより可処分所得から贈与といった形態から、給与を支払うといった形にすることによりかなりの効果があるといえます。これを10年続けると250万×10=2500万もの大金になります。

③経費による8つの節税対策
管理会社の設立によりケースバイケースですが、個人申告と比較して経費に落とせる金額が格段に増えます。
(1)交際費
個人申告でも経費になりますが、税務署の目は厳しいといえます。一方、法人ですと実務的にはある程度認められているのが現状です。
(2)車両の経費化
個人申告では、一般の普通車を経費にすることは非常に難しいと思われます。一方、法人については実務的にはある程度は認められているのが現状です。(フェラーリ等のスポーツ車は不可能ではありませんが、あまりお勧めできません)
(3)別荘・保養所の経費化
個人申告では、経費にできません。一方、法人については接待目的、保養所など業務使用が認められれば経費に落とすことは可能です。業務として相当であれば別荘の維持費(光熱費・固定資産税・管理費・建物の減価償却費)が経費となります。
(4)生命保険の経費化
個人申告では、経費に落ちません
一方、法人については保険の種類にもよりますが経費に落ちます。
個人については経費でなく所得控除として10万円の控除が可能です。(H24以降は12万)
従いまして法人設立後は、個人にてご加入済みの保険についても見直すことにより節税を絡めた合理的な保険加入が可能になります。
例えば、養老保険や年金、終身保険は個人加入に、定期保険は
法人加入するなどが考えられます。
(5)退職金の経費化
個人申告については、ご自分自身やご親族の退職金については経費におちません。
一方、法人については経費にすることが可能です。
また、退職金をもらった側の税務ですが、かなり優遇されております。優遇された退職金を使うことが管理会社設立の目的でもよいでしょう。
退職金の税制ですが、①生存時の退職金と②死亡時の退職金では相違いたします。
①生存時の退職金
*他の所得と区分して税額を計算します(申告分離課税です)
従いまして、他の所得の大小に影響されません。
*1年間あたり40万の退職金控除を受けられます。さらに20年を超えると70万に増えます。
*退職金控除を差し引いた後の金額がそのまま税金の対象にされるのではなく、その半分が税金の対象になります。
(例)退職金を2000万支払う場合(勤続15年)
2000△600(40×15)=1400
1400×1/2=700(税金の対象)
税金170万くらい(住民税を含む)
②死亡時の退職金
*所得税でなく相続税がかかります。
*500万×法定相続人の数の非課税枠があります。
(例)退職金を2000万支払う場合(勤続15年・相続人4人の場合)
2000万△2000万(500×4人)=0万(相続税の対象0になります)
(6)役員の小規模企業共済への加入
個人の場合ですと、5棟10室、駐車場50台以上などの事業的規模のかたのみ加入可能ですが、法人ですと役員に加入することにより誰でも加入が可能となります。
年額84万まで所得控除が受けられますので節税が可能です
また、解約した場合ですが、退職に伴う場合は、上記の退職
金と同様の扱いになりますので優遇措置をうけることが可能です。
(7)給与の経費化
個人申告の場合については、青色事業専従者給与として給与が経費化できますが、下記のように要件が厳しくなっております。不動産賃貸業については実務的には高額な専従者給与は経費にすることは不可能と考えられます。
1.1年間の1/2以上働くこと。
2.労務の対価であること。(言い換えますと実際に体をつかって労働することです)
3.税務署に届け出ること。
一方、法人については、上記のような要件がありません。
役員に加入することが要件ではありませんが、役員に加入することにより給与を高く設定することが可能です。
法律的に説明いたしますと、言葉が少しややこしいですが役員以外の者は雇用契約となり労務の対価が給与を支払う主な理由になりますが、役員になりますと会社に対しての委任契約となり、労務のほかに会社に対する責務も発生し、それに見合う給与という観点から給与を高く設定できるかたちになります。
(8)ゴルフ会員権の年会費・ロータリーの年会費
個人申告では経費におちませんが、法人では業務と認められれば経費におちます。

【まとめ】
個人申告では経費として認めらないものが多々あります。そのため、法人を設立することにより確実に経費に落とせる金額は増えます。
また、実務的には個人申告では認められない経費も法人ではある程度、経費にしてしまっているのが税務の実務でもあります。(本来、個人・法人の区別により経費の可否の判断に相違はないのですが)
経費に落ちるということは高所得者にとっては収入が2倍になることを意味します。経費に落ちない場合は、50%の税金を支払った後の金額から費用を支払う必要があるからです。ですから業務に関係する費用を経費にすることは収入を2倍にすることと同じ意味になります。

2.管理会社の3つの形態

①管理型管理会社
1. 通常の管理会社を想像すればよいと思われます。管理会社が借主さまから家賃を預かり、管理料や立替金(細かい修繕費)を差し引いてオーナーに返還します。
*管理契約書の作成が必要になります。
*管理料が管理会社の売上になります。
*毎月、決まった時期までに管理料等を差し引いてオーナー名義の口座に送金する必要があります。
*管理料はおおよそ10%から15%程度が通常です。
*管理料が最低でも500万はあったほうが無難です。(家賃収入にして3000万円以上ないと節税効果は低いでしょう)
*家賃の振込み先変更届けと管理会社設立のご案内を借主さま全員に届ける必要があります。
*管理会社とオーナー間にて補修費用等の負担を取り決めます。通常は固定資産税、共用電気代、退去時のリフォーム費用、天災等による修繕費はオーナーの負担のことが多いです。

②サブリース型管理会社
1.管理会社とオーナーの間で、賃貸借の契約をします。一般的には一括借り上げや転貸のある家賃保証契約はサブリースと言われております。たとえば、世帯数が10戸のアパートにつき1戸あたりの家賃が10万だとすると、一括契約ですが10戸まとめて80万から90万で契約します。この契約形態では空き室のリスクを管理会社とオーナーで共有する形になります。
*オーナーと管理会社間で賃貸借契約書を締結いたします。
*既契約については借主さまとの契約書を変更する必要があります。ただし、事務手続きが煩雑することが予想されますので通知に程度に抑え、更新時に契約書を作成してもよいでしょう。
*既契約についての敷金についてはオーナーから管理会社へ資金を移動するのが通常です。
*サブリース後の敷金・礼金・更新料はすべて管理会社の収入となります。
*サブリース後の管理会社がオーナーに支払う家賃と借主さまから受ける家賃の差額の割合ですが通常、13%から18%くらいがよいでしょう。(空き室リスクを負担するため管理型の管理会社より高い割合となっております)
*サブリース後の管理会社とオーナー間にて補修費用等の負担を取り決めます。通常は固定資産税、共用電気代、退去時のリフォーム費用、天災等による修繕費はオーナーの負担のことが多いです。
*受取家賃と支払家賃との差額が最低でも500万はあったほうが無難です。(家賃収入にして2800万以上ないと節税効果は低いでしょう)

③所有型管理会社
建物を会社の所有にする方式です。
*家賃の全額が会社の収入となります。
*新規にマンション等を建設する場合や、個人所有のものを売却する方法もあります。
*土地は個人所有となっておりますので、管理会社は地代を支払う必要があります。(おおよそ土地の固定資産税の2倍から3倍でよいでしょう。土地の賃貸借契約と同時に管理会社との間にて「土地の無償返還の届け出書」を税務署に提出します)
*家賃の金額は最低でも500万以上はあったほうがよいでしょう。(上記2つの管理会社と比較すると格段に家賃収入が少なくても設立可能となります)
*上記の2つのタイプの管理会社の管理料や支払い家賃の金額については金額の大小につき税務のトラブルがありますが、このタイプではまったくこの問題は生じません。

3.管理会社の管理料の考え方

①税務署からクレームがあった場合の管理料の割合
税務調査等により税務署からクレームがあり管理料やサブリースで支払う家賃につき否定された場合は、中小企業・零細企業・上場企業を含めた管理会社の管理料の相場をもとに訂正することを要求されます。
上記の相場ですが、上場企業も含まれておりますので、通常は、管理会社で5%から7%、サブリース型の管理会社で8%から15%程度になります。
したがって30%の管理料をとっていた場合は8%の管理料を基にオーナーは修正申告または更正を受ける形となります。

*ただし、下記のように全額否認という判決もございます。
管理会社タイプH18年の判決
管理料20%以下でも管理の実態を伴わないとされ、全額否認の注目すべき判決もあります。

外部の管理会社とオーナー会社との管理契約のうち重複契約をチェックする必要があります。
管理業務記録簿の作成などの作成が必要かもしれません。

②税務署からクレームがある管理料の割合
税務調査でクレームが入る管理料やサブリースの場合の支払家賃ですがおおよそ私の経験では20%を超えた場合に限り入る気がします。言い換えると20%を超えないとクレームが入りにくいということです

たとえば管理料15%の管理会社は何も税務署からのクレームはなく、一方、管理料25%の管理会社は税務署からのクレームにより訂正させられ、その際の管理料は15%でなく、世間相場である5%から7%になってしますのです。
矛盾するような気がするかもしれませんが、税務の現場では管理料やサブリースの家賃を否認する線(おそらく20%程度)と否認した場合の管理料の線(おそらく5%から7%)とは相違するのです

4.管理会社の設立の際に7の留意点
①資本金
消費税の還付を受ける場合以外は、資本金を1000万円未満にします。1000万以上にすると第1期及び2期ともに消費税の納税義務が発生します。
②株主構成
推定相続人が株主になります。理由は株式も相続財産になってしまうからです。
さらには土地を賃借し、建物の所有が管理会社(所有型の管理会社)の場合は、土地の2割相当額が株式の価格に加算されてしまいますから要注意です。
推定相続人が資本金が無い場合は、金銭貸借契約書(利息はなしでもかまいません)を締結し金銭を借りてから出資すればよいでしょう。
③役員構成と給与
給与を支払う予定の推定相続人については株式会社の取締役にします。
④設立の手数料
登記費用ですが司法書士報酬も含めて35万円程度かかります。
⑤税理士等への支払い
記帳処理や申告料を含めて毎年50万程度は必要です。
⑥社会保険の加入義務
常勤の役員については厚生年金と健康保険に加入する必要があります。
会社負担分も合わせておおよそ給与の2割くらいが保険料となります。(かなりの負担になることが予想されます)

5.税務調査への8つのポイント
①交際費
相手方の氏名を領収書に記載します。
②車両
車両維持費(ガソリン・車検・自動車税)などについては業務以外のものも若干あるものとして経費にしない部分をつくります。(1割程度経費にしないとよいでしょう)
または個人負担分として1ヶ月あたり1万円以上のリース料を支払うのもよいかもしれません。
③福利厚生費
親族間での福利厚生費は原則ないものとします。家族間ですと業務とそれ以外の区別が非常に難しいと思われます。(一方、交際費は相手方が他人ですので区別が割りと簡単です)
一般的には限定的に忘年会・新年会・暑気払い・健康診断料・置き薬・作業服等になります。
④別荘
家族での業務外での使用の場合は使用料を支払ってください。
世間相場で2日1万から3万で十分でしょうか。
⑤管理料
20%を超えないようにします。
⑥給与
振込みにします。また振り込む通帳は、相続人が自ら使用する銀行印のものを使用します。通帳やカードの管理も相続人自らが行うようにします。
⑦現金出納帳
現金出納帳を作成することが最もよい方法ですが、事務手続きが煩雑な場合は、現金で支払った経費を預金より精算する形をとり、通帳を現金出納帳の代わりにします。これだけでも税務署からの印象はかなりよくなります。
⑧旅費
家族旅行を経費にしないようにします。ただし、社員旅行という形でしたら2年に1度は認められると思われます。この場合は4泊5日以内にて1人あたり10万程度の負担とします。

6.3つのケース例
①家賃5000万円のマンションをすでにお持ちの個人のかた
*一般の管理会社を設立
*振込み口座の変更と管理会社設立のご案内*12%の管理料を取る
*役員を4名
*おおよそ250万くらいの節税も可能
②給与3000万のエリートサラリーマンで家賃1000万円(経費は200万)のマンションをお持ちのかた
*所有型の管理会社を設立
*建物の帳簿価額にて売却
*賃貸借契約の変更
*無償返還の届出
*土地の賃貸借契約書
*役員ご本人のみ
*節税160万は可能
③不動産所得が3000万円、55歳のかたで、返済も終わった古くなったマンションをお持ち
*所有型の管理会社を設立
*建物の帳簿価額にて売却
*賃貸借契約の変更
*無償返還の届出
*土地の賃貸借契約書
*役員ご本人と相続人
*節税300万は可能

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